2019年10月の消費税増税に向けて、政府が打ち出した「ポイント還元」が話題になっています。

消費税増税後の景気対策

・今、なぜポイント還元

「キャッシュレスの買い物で2ポイント還元します」

店頭でのセールではありません。

消費税率10%への引き上げに合わせて、政府が検討をはじめた景気対策です。

税率が14年に5%から8%に上がった際、駆け込み需要の反動で消費が落ち込んだため、今回は同じ轍を踏まないよう、景気対策を総動員。

●増税後の消費下支えに喚起!

<政府が検討するその他の対策>

〈税制〉住宅ローン減税の拡充

〈税制〉自動車関連税制の見直し

〈税制〉食料飲料品などの軽減税率

〈価格転嫁〉消費税還元セールを見直し

前回は増税前の14年1~3月の個人消費は年率ベースで8%伸びましたが、増税後4~6月では同▲17%に落ち込んでしまいました 。

前回の引き上げ時に景気が停滞した苦い経験を教訓に「できることは何でもする」という政府の姿勢の表れのようです。

●前回、還元セールは禁止だった! ?

14年の増税時、転嫁対策特別措置法で「消費税還元セール」が禁止されたため、一斉に価格転嫁されて物価が大きく跳ね上がりました。

<還元セールと消費税>

97年の3%から5%の引き上げ時、小売業者の一部は仕入業者に納入金額の値引きを強要して、還元セールを行った。

増税で仕入業者がしわ寄せを受けたため、政府は14年の増税時には還元セールを禁止し、監視のため「転嫁Gメン」を設置した。


還元セール禁止は本来、下請けいじめ防止が目的なのに、消費者向けに も一律転嫁すべしとの誤ったメッセージになったようです。

前回の教訓より、今回は転嫁対策特別措置法を改正し、転嫁Gメンと呼ばれる調査官の運用を見直すことに。

●今度は政府が還元セール?


増税対策の目玉とされているポイント還元策ですが、まだ詳細は決まっておらず、今のところ、次のような案が浮上しています。


<消費税ポイント還元制度>


・消費税増税後、中小の小売店などで購入時に

・クレジットカードやデビットカードなどで、現金を使わずキャッシ ュレスで払った場合に

・増税分の2%分をポイントとして還元する。


●では、対象となる中小の店舗って?


この対策実現に向けて大きな問題になるのが、対象となる「中小」店舗の線引きです。

税法の定義なら資本金1億円以下の法人ですが、中小企業基本法では小売業なら資本金5,000万円以下か従業員50人以下としています。

<カード会社のシステム対応は?>

大手カード会社は100万規模の加盟店を抱えています。

そのため、政府の基準にかなった中小の加盟店を把握するためには、 膨大なデータ収集とシステム対応が必要になるでしょう。

そのことからも、カード会社の反発は必至ではないだろうか。

●還元期間は1年間

当初数ヵ月と思われた還元期間ですが、短期間では効果が一時的でその後、長期の消費低迷につながるリスクがあるとして、1年程度とする案が浮上。

対象も中小の小売だけでなく、サービス業など幅広い分野への拡大も検討されています。

●ポイントに格差。シ ス テ ムは間に合うのか!?

カード会社が利用者に付与するポイントに2%分を上乗せし、その上乗せ分を国が補助する仕組みだが、カード会社は利用額に応じて独自にポイントを付与している。

そのため、ポイントの使いでに差があり、公平性が保たれないとの声もでています。

また、カード会社は実行に際してはシステムの改修が必要です。

しかし、「増税まで時間がない上に、1年程度の時限措置に多額のコストはかけられない」のが本音のようです。

●本当に中小小売のためになる?

増税分の補てんとしながら、8%に据え置かれる飲食料品も対象なのは整合性がないとも言えます。

首相官邸のHPを見ると、還元策を中小企業の支援策と位置付けています。しかし 、現金対応だった中小小売店がポイント還元になるためには、カード会社等との契約や決済端末の導入など手間やコストが必要に。

●経産省「キャッシュレス・ビジョン」

還元ポイントは駆け込み需要の反動減を抑えるのが狙いですが、政府の「キャッシュレス決済推進」に向け、現金払いが多い中小小売にクレジットカード払いを普及させる目的も。

<2025年までに40%を目標>

経産省は2018年4月に策定した「キャッシュレス・ビジョン」で現在は20%に届かないキャッシュレス決済を40%程度に引き上げる「支払い方改革宣言」を発表。7月には産・学・官による「キャッシュレス推進協議会」が設立された。

●還元で一石四鳥を狙う?

還元策は増税後の景気対策とキャッシュレス化推進、中小企業支援という目的の異なる3つの政策を組み合わせたために、複雑さが増しています。マイナンバーカード普及も加われば、一石四鳥を狙ったことになります。

●日本はキャッシュレス後進国?

世界各国のキャッシュレス 決済比率を比較すると、韓国の89.1%をはじめ、キャッシュレスが進展している国は軒並み40~60%台なのに、日本は18.4%にとどまっています。

果たして、消費税増税、キャッシュレス化は成功するのでしょうか。